「アートを “手段”に、まちを ”編む”」逗子アートフェスティバルにてプロジェクト進行中

逗子駅から歩いてすぐ、逗子銀座通り商店街の一角に
まちゆく人が集える場所をつくっています。

今年の2月に逗子に引っ越して来たのですが、ひょんなことで10月に開催される「逗子アートフェスティバル」に関わることになり、さらにひょんなことでプロジェクトをがっつり率いる、という事態になっています。

それがまた本当におもしろいことになっていて。
その名も、「シティ・キャンバス・プロジェクト」と言います。
文字通り、まちをキャンバスにアートを楽しむプロジェクト。なのですが、ここでいうアートとはあくまで “手段” であり、”作品” だけを意味しているのではありません。ここに生まれる空間とコミュニティ、そのプロセス全部をひっくるめて、私たちはこれこそが “アート” だと、日々実感しています。

なんでこんな試みをしようと思ったのか。

2015年から3年に渡りフィールドワークして来た、世界中に散らばる住民主導のコミュニティづくりのムーブメントの数々。

特にアメリカ・ポートランドのNPO「シティ・リペア」の事例を参考に、また実際にメンバーと直接関わりを持ちながら、この地・逗子で実際の場に落とし込んでいるのです。

Intersection Painting / Portland, OR

交差点を、カラフルに、塗っちゃう!?!?

シティ・リペアは1999年、ポートランドの片隅にあるマーク・レイクマン(シティ・リペア創立者)の家ではじまりました。毎週月曜日にポットラック=持ち寄りごはんをして仲良くなって、自分たちの住んでるコミュニティをもっと楽しくしたいよね〜なんて語り合えるようになって、だったらそこにある交差点を、楽しくみんなで集える場所にしよう!

そんな会話から生まれたのが「交差点ペインティング」です。

交差点をカラフルに塗ってしまう。なんともパンクなアイディアをゲリラ的に実行し、また交差点の四つ角にはベンチやシェアライブラリーや掲示板、はたまた いつでもお茶が飲める ティーステーションなど、“近所の人がつながるきっかけになるもの” をどんどんつくっていきました。

ゲリラ的に塗ったので・・・もちろん行政はNO!ただそこで終わらないのが、みんなで楽しい交差点を作ることでできた強固なコミュニティ。住民の一人がリサーチャーだったので、この交差点があることでいかにコミュニティが良くなったか=事故率の低下、みんなが掃除をするから美しくなったなどのデータをわかりやすく作成し、行政に交渉。ポートランド市はそれを受け入れ新たな条例ができ、シティ・リペアの方法論 “プレイスメイキング” が、ポートランド中に広がることとなったのです。

また彼らは約20年前から「VBC=Village Building Convergence(村づくり集会)」というお祭りもはじめました。その真ん中にあるのは「一緒につくる・はたらく」ということ。みんなで交差点を塗ったり、ベンチをつくったり、30を超えるプロジェクトがまちの中に同時多発します。

こうしたまさにDIY=Do It Yourself!! な感じが、今年からの逗子アートフェスティバルの姿になると、私は思いました。

住む人が、自分たちのためになにかをつくること。
そこに “手段” として、アートをつかうこと。

そして去る9月6日には、シティ・リペアのコアメンバーのひとりであるマット・ビボウさんを招いて、逗子でトークイベントを開催。80名を超える参加がありました!(世田谷で100名集めましたが、まさか逗子でこんなに来てくれるとは、感激でした!)

満員御礼!ありがとうございました!
平井市長+マット+ZAFメンバー!
平井さん+マット+ユミ。謎の組手!!!

イベント前、マットとは実際にアートフェスティバルの会場となる場所や、普段私たちが日々通っているお店や海岸を案内し、意見交換。マットはいつもそうなのですが、
「ここでそれやるならさ、こうやってみたらどう?」
と、どんどん、おもしろいアイディアをアドバイスをしてくれるんです。マットのプレゼンテーションにあった、数々の実践と通じるような遊びごころがあり、場をより魅力的にしてくれるアイディアをたくさん収穫することができました。

ふらりと歩けば友人に逢い、
「おーい!」とあいさつできる感じ。
逗子の魅力であるそのサイズ感も体感してもらい、ビーチではすぐ裸足になって、波とたわむれるマットでした。

そして・・・満を持して9月9日からはじまった、シティ・キャンバス・プロジェクト公開ワークショップ、その名も「WORK PARTY」!!毎週末のように開催し、参加者もどんどん増えて来ています。

あくまでパーティですから・・・

音楽あり!=DJ屋台出現!
ごきげんな音楽をバックに手を動かします。


食あり!=地元のスーパー「スズキヤ」さんや、商店街のピザ屋「ハマまで5分」さんからの差し入れ、参加者の手作りおかずなど、毎回大満足をいただいているランチ。
シティ・リペアのマットがいつも「みんなで食べることは一番大事!」と言う、そのアドバイスから見事、こんな食卓が生まれました。

子どもも一緒に!=おとなと子どもが交わり、それぞれの役割をする場が自然と生まれています。

予算がないので・・・
あるものを持ち寄り、できることを持ち寄り、
周りに協力してもらって、活動できています。

ワークパーティの日以外にも、壁画を描くアーティスト・嶋野ゴローさんと一緒に、銀座通り商店街の壁画の制作を進めています。

昨年の壁画の上に、まちゆくひとにお声がけして ひとがた を取らせていただき、その線を白で際立たせる。そして、このあと上から色を塗ってもそのひとがたは残るよう、マスキングテープを貼っています。先日はゴローさんが、もっとたくさんのひとを入れたい!と言うので、商店街のお店を訪問し、絵の中に入っていただきました。

酒屋 三河屋さんの大将にベンチの上に立っていただき、ゴローさんも立ち、輪郭をうつしとる。

三河屋さんは何年目なんですか?

もう110年だよ。

ひゃ、ひゃくじゅうねん!?

そんな会話のやりとりをしながら。
花屋さん、眼鏡屋さん、ピザ屋さん、写真屋さん、自転車屋さん…たくさんの方に協力いただきました。

そしてまた別の日はマスキングテープ作業日。
メンバー数人で黙々と作業していると、なにやってるのー?と話しかけられます。立ち止まった何人かでの会話になることも。
2時間の作業中に、何人かのひとが手伝いにきて、壁を向きながら作業する。これから仕事なんだけど30分だけ!そんなふうに立ち寄ってくれるのが嬉しくて。

そして、そこで語られていることはたいてい「逗子について」だったりします。

一緒にアートフェスティバルをつくっている、市役所の文化スポーツ課のみなさんが、お昼休みで続々と、別々にやってきて大笑い。みんなきっと気にしてくれていて、それぞれに飛んできてくれて。

一緒に制作してくださったある方の言葉、

ここは新たなパワースポットだから。
元気がないときは、ここに来たらみんなに元気をもらえる。
そんな場所になってきてるよね。

まちのなかに張り巡らされている、縦の糸と、横の糸。
それを編み上げる役割をしたいと願ってこれをはじめて、なんとなく、それがゆっくりとはじまっているような、そんな気持ちになったある日の、たった2時間。世界で見て、感じて来たいろいろを、この土地で、この土地ならではのやり方で落とし込んでいけることが本当におもしろいです。

この壁画の中に入った人だけでも、もう50人を超えています。

<<以下、2021年追記>>

逗子にずっと住んでいる人、引っ越して来たばかりの人、ふらっと立ち寄った人・・・
たくさんの人の手が加わって、壁画は完成しました。

2018年、2019年はヤーンボミングでドレスアップ!
後ろに座れる、カウンターベンチになりました。
ここにwifiが飛んでいて、仕事もできたりしたらサイコーだったのだけれど!

スズキヤ駐車場のリニューアルにともない、壁画は2020年に撤去されてしまいましたが、みんなで作ったこのアートを、まちの人たちはよく見てくださいました。まちなかにアートが、ハプニングがあふれるまちになればいいな。そんなことを企みながら、これからも活動していきたいと思っています。


ポートランド・シティリペアのまちづくり
〜たった一つの交差点が法律を変え、世界を変える
https://greenz.jp/2019/12/13/the_city_repair_portland/


「Village Building Convergence(村づくり集会)」に見るこれからの祭りの風景
〜ポートランド・シティリペアのまちづくり
https://greenz.jp/2020/02/03/the_city_repair_portland_2/

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